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「この国の体力を強くする」——ホンダ、アルプロン、クロレラ工業が結成した異色タッグが、『藻』で日本の食を塗り替える
ビジョナリー編集部 2026/04/06
ホンダの「藻」が食料危機を救う? プロテインの雄・アルプロンと挑む、島根発「タンパク質革命」の全貌
2030年から世界規模で深刻化すると予測されている「タンパク質クライシス(プロテインクライシス)」。人口増加と環境悪化により、従来の食肉や魚介類だけでは人類が必要なタンパク質を賄いきれなくなる未来が目前に迫っている。
そんな地球規模の課題に対し、2026年3月17日(火)、異色のタッグが解決策を提示した。プロテイン製造の革新を続ける株式会社アルプロン、日本が世界に誇るモビリティメーカーの本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)、そして藻類培養のパイオニアであるクロレラ工業株式会社の3社だ。
発表されたのは、ホンダが開発した革新的な藻類原料「Honda DREAMO(ホンダドリーモ)」を配合した次世代エナジードリンク。なぜ自動車メーカーが「食」に参入するのか。そして、島根から世界を見据えるアルプロンの坂本雅俊代表が描く「世界一環境に良い工場」の全貌とは。日本の食料安全保障を揺り動かす、熱き共同開発の舞台裏を追った。
故郷・島根から世界へ。「この国の体力を強くする」起業家の使命感
アルプロンの坂本雅俊社長は、今年で創業25周年を迎える同社の歩みを、自らのルーツである島根県雲南市での経験と重ね合わせて語る。坂本家12代目として生まれ、「次代へつなぐ」というミッションを背負って育った坂本氏にとって、事業を通じた故郷への貢献は一貫したテーマだという。
「東京に住んでいるからこそ、島根の雇用や税収に貢献したいという強い思いがある」と語る坂本氏。同社の理念である 「この国の体力を強くする」 という言葉には、単なる健康増進にとどまらない、より切実な危機感が込められている。
現在、日本の食料自給率は38%台まで低下している。2030年以降に懸念されるタンパク質不足に対し、坂本氏は「輸入依存を減らし、国内で持続可能なタンパク源を確保することは、世界を救うためのミッションである」と断言する。一企業の利益を超え、テクノロジーで食料問題を解決しようとする強い意志が、今回のプロジェクトの原動力となっているのだ。
ホンダの「カーボンサイクル」が生んだ、タンパク質含有量69%の“希望の光”
プロジェクトの核となる原料「Honda DREAMO」は、意外にも自動車メーカーであるホンダの研究から生まれたという。同社は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、排出されたCO2を回収・循環させる「カーボンサイクル」を研究。その過程で、CO2を吸収して成長する 「藻」の持つ圧倒的なポテンシャル に着目した。
ホンダの斎藤氏は、この藻がタンパク質含有量で最高69% という驚異的な数値を記録し、アミノ酸スコアやミネラル含有量も極めて優秀であることを明かした。ホンダがこの革新的な原料のパートナーとしてアルプロンを選んだ理由は、同社の品質管理体制と、何よりも「スピード感」にあったという。
「問い合わせからわずか5日後には島根の工場見学をセッティングされた。坂本社長自らのフットワークの軽さと熱量に圧倒された」と斎藤氏は振り返る。大企業の技術力と、ベンチャーの機動力が合致した瞬間だった。
「クロレラ一筋」の老舗が、60年の伝統を背負って踏み出した“越境”の決断
製造面で不可欠な役割を担ったのが、1964年創業のクロレラ工業だ。同社は60年にわたりクロレラ培養を専門としてきたが、今回のプロジェクト参画には社内の大きな葛藤があったという。
板波社長は、社内にあった 「クロレラ以外の藻類に手を出すべきではない」という保守的な空気 が最大の壁だったと振り返る。しかし、それを打ち破ったのは創業時の精神だった。
「1964年に64歳で事業を立ち上げた創業者のチャレンジ精神を思い返した。激動の時代、我われも新しい一歩を踏み出すべきだ」
伝統を重んじる老舗企業が、2020年代の食料危機という社会的課題に対し、自らの殻を破ってオープンイノベーションに加わったのだ。
朝食欠食という現代の課題を解決する「IZMO + Bio Energy Drink」
共同開発の結晶として誕生したのが、新製品 「IZMO + Bio Energy Drink(イズモ バイオ エナジードリンク)」 だ。現代日本人の課題である「朝食欠食率」の高さに着目し、忙しい朝に1杯で必要な栄養素を補給できる「朝の原動力」として設計されている。
製品には「Honda DREAMO」が採用され、日本の植物由来の栄養素が凝縮されている。人工甘味料を使わない優しい味にこだわり、毎日続けられる美味しさを追求したという。
坂本氏は、3月17日(火)から「Makuake」にて先行発売を開始することを発表。パッケージに刻まれた 「HONDA Official Licensed Product」 の文字には、ホンダブランドへの信頼と、アルプロンの技術が融合したことへの誇りが込められている。
おわりに:島根から描く「世界一環境に良い工場」のビジョン
取材の締めくくりに、坂本氏がAIでビジュアル化した「未来の工場」の構想が語られた。それは、単なる製造拠点ではないという。再生可能エネルギーで稼働し、原料を自給自足し、世界中から視察が集まるような、 「本質的な価値を持つ夢の工場」 だ。
一社では解決できない地球規模の課題も、異業種の強みを持ち寄れば突破口が見える。モビリティのホンダ、バイオのクロレラ工業、そしてマーケティングとスピードのアルプロン。島根の地から発信されるこの挑戦は、タンパク質危機の解決に向けた大きな一歩となるに違いない。


