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2025

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    「昆虫食」最前線――世界が注目する“未来の食卓”、その魅力と課題、そしてはじめの一歩

    「昆虫食」最前線――世界が注目する“未来の食卓”、その魅力と課題、そしてはじめの一歩

    「昆虫食」と聞いて、どんなイメージを持たれるでしょうか?
    「怖い」「なんだか抵抗がある」「でも、ちょっと気になる」――そんな声が多く聞かれます。今、世界中で昆虫食が“サステナブルな食の革命”として大きな注目を集めています。その背景には、地球規模の食糧危機予測、環境への配慮、そして栄養価の高さなど、多くの理由が隠されています。
    この記事では、昆虫食がなぜ今これほど注目されているのか、どんなメリット・デメリットがあるのか、そして初心者が気軽にチャレンジできる方法まで、幅広く分かりやすく解説いたします。

    世界が「昆虫食」に注目する理由

    食糧危機の救世主として

    世界人口は2050年には97億人に到達すると予測されています※1。急速な人口増加により、牛・豚・鶏などの家畜由来タンパク質の供給が追いつかなくなる“タンパク質危機”が現実味を帯びてきました。
    この問題を受け、2013年に国連食糧農業機関(FAO)は「昆虫食こそが未来の食糧問題解決のカギ」とする報告書を発表。以降、昆虫食に関する研究や商品開発が一気に加速しました。もはや“奇抜な食文化”ではなく、人類の生存を支える「実用的な選択肢」として期待されています。

    環境負荷が小さい

    昆虫の生産は、家畜と比べて圧倒的に環境にやさしいのが特徴です。

    • 水使用量:コオロギ1kgの生産に必要な水は、牛肉の約1/2500。
    • エサの量:昆虫1kgの生産にはエサ2kg程度で十分。牛の場合は約8kg必要。
    • 温室効果ガス排出量:牛の約1/10以下。
       

    また、狭いスペースで大量に飼育できるため、都市部でも効率的な生産が可能。食品ロスや廃棄物をエサとして活用する試みも進んでおり、持続可能な循環型社会の実現にも一役買っています。

    栄養価が高い

    昆虫は「高タンパク・低脂肪・高ミネラル」のスーパー食材です。

    • 乾燥コオロギ:タンパク質含有量65%前後
    • イナゴ:乾燥重量の約60%がタンパク質
    • 亜鉛、鉄、カルシウム、食物繊維、不飽和脂肪酸も豊富
       

    牛や豚と同等、またはそれ以上の“次世代タンパク源”として、多くの専門家がその価値を認めています。

    昆虫食のメリット

    1. 「丸ごと食べられる」から食品ロス削減にも

    昆虫は骨や殻を除く必要がなく、ほぼ100%食べることができます。家畜では可食部が半分ほどですが、昆虫は“食べ残しゼロ”が実現可能。フードロスを減らし、資源の有効活用にもつながります。

    2. 生産・加工が簡単

    短期間で成長し、加工も容易。パウダー状やペースト状にすることで、お菓子やパン、ラーメン、スナックなど、さまざまな食品に応用できます。

    3. 地球温暖化対策にも寄与

    昆虫の飼育による温室効果ガスの排出量はごくわずか。食の選択を変えるだけで、環境保護に貢献できる時代です。

    4. 新しい産業・雇用の創出

    昆虫の養殖は省スペース・省エネルギーで始められるため、農村部や高齢者、障がい者の新たな仕事にもなりやすいという利点があります。世界各地で「バリアフリー産業」としても注目されています。

    それでも課題はある――昆虫食のデメリット

    1. アレルギーのリスク

    昆虫には、エビやカニと同じ「トロポミオシン」という成分が含まれており、甲殻類アレルギーの方は注意が必要です。初めて食べる場合はごく少量から慎重に試すことが勧められています。

    2. 衛生・安全面

    自然採集した野生の昆虫には、毒や病原菌、寄生虫が含まれる危険もあります。農薬が残留している可能性も否定できません。安全に食べるためには、衛生管理が徹底された養殖昆虫や、信頼できる加工品を選ぶ必要があります。

    3. 「見た目」への心理的ハードル

    多くの人にとって、昆虫の姿は食欲をそそるものではありません。特に原型をとどめた商品は、抵抗感が大きいのが現実です。ですが、最近は見た目を工夫した“パウダー加工”や“焼き菓子・スナック”が増えており、「虫を食べている感」を感じにくい商品も続々と登場しています。

    4. 価格が高め

    現時点では生産コストや流通コスト、そしてまだ市場が小さいこともあり、一般的な食品に比べて値段が高めです。しかし、量産体制や技術革新が進めば、今後は手が届きやすい価格になると期待されています。

    日本と世界の昆虫食文化──意外な歴史と広がり

    世界の昆虫食

    アジア、アフリカ、中南米では“昆虫食=日常”という国も珍しくありません。タイではコオロギのスナックやパウダーがスーパーの定番商品。ケニアではシロアリを使った伝統料理があり、栄養失調対策にも活用されています。ラオスではヤシオオオサゾウムシの幼虫が子どもたちの人気おやつとなっている事例もあります。

    日本の昆虫食

    実は日本にも古くから昆虫食文化は根付いています。特に長野県では、イナゴの佃煮、ハチノコ、カイコのさなぎ、ザザムシなどが「信州四大珍味」として有名です。これらは、稲作や養蚕と密接に関わり合いながら、貴重なタンパク源として親しまれてきました。

    初心者でも安心、「昆虫食」デビューのおすすめガイド

    「いくら地球や健康に良いと分かっていても、いきなり虫そのものを食べるのはハードルが高い…」という方へ。実は、まったく新しい感覚で試せる商品がたくさん登場しています。

    1. パウダー・加工食品から始めよう

    • コオロギパウダー入りクッキーやせんべい
    • 昆虫プロテイン入りグラノーラやバー
    • パウダーを練り込んだラーメンやパン
       

    これらは見た目も味も普通のお菓子や主食と変わらず、昆虫の存在をほとんど意識せずに食べられます。まずは“意外と美味しい!”という驚きを体験してみてはいかがでしょうか。

    2. スナック・チップスで手軽に

    • コオロギやイナゴをローストしたスナック
    • ミールワームやバンブーワームのチップス
       

    サクサクの食感と香ばしい風味が特徴です。お酒のおつまみにもおすすめ。エビのような風味で「むしろクセになる」という声も少なくありません。

    3. 話題の“食べ比べセット”でプチ冒険

    複数種類の昆虫(コオロギ、ミールワーム、タガメなど)が少量ずつセットになった商品も人気です。「食べ比べ」でお気に入りの昆虫を見つけるのも楽しい体験になります。

    4. 子ども向けには“解説付きセット”で自由研究も

    昆虫の生態や栄養について解説されたセットもあり、夏休みの自由研究にも最適です。「なぜ昆虫を食べるのか?」を親子で学ぶきっかけになります。

    昆虫食の未来――「食の常識」が変わる日は近い

    「昆虫を食べるなんて…」と驚かれる時代は、もしかするともう終わりに近づいているのかもしれません。
    環境問題・食糧危機・人口増加――こうした“人類共通の課題”に対し、昆虫食は持続可能で実用的な選択肢として急速に浸透しつつあります。すでに欧州連合(EU)では昆虫食品の販売が拡大し、日本国内でもベンチャー企業や大手メーカーが新商品を次々と打ち出しています。
    さらに、アレルギーリスクを減らすためのゲノム編集技術や、食品ロスを活用した養殖法など、研究開発も急ピッチで進行中です。

    まとめ――“新たな食の選択肢”としての昆虫食

    • 昆虫食は「高タンパク・低環境負荷・高効率」な未来の食材
    • 心理的なハードルや安全面への配慮が必要だが、技術革新が急速に進展中
    • まずはパウダーや加工品、スナックから気軽に始めてみるのがおすすめ
       

    「知らないままは、もったいない」。昆虫食は、世界が抱える課題に“おいしく、楽しく”チャレンジできる新しい選択肢です。気になった方は、ぜひ一度その扉を開いてみてはいかがでしょうか。

    参考文献

    ※1:国際連合広報センター
    https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/social_development/population/

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