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認知症の基礎知識と日常生活への影響――進行・治療・サポートまで徹底解説
ビジョナリー編集部 2025/09/16
超高齢社会を迎えた日本では、認知症は誰にとっても避けて通れないテーマとなりつつあります。最新の調査では、65歳以上の3人に1人が認知症またはその前段階である「軽度認知障害(MCI)」に該当するというデータも報告されています。
認知症とはいったいどのような症状なのか?進行するとどんな困難が生じるのか?そして私たちにできる対策はあるのでしょうか。
本記事では、認知症の基本から進行、日常生活への影響、そして今日から取り組める予防・対策までを具体的に解説いたします。
認知症とは何か?「もの忘れ」との違い
認知症の定義
認知症とは、脳の病気や障害によって認知機能(記憶、判断力、理解力など)が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。
- 加齢によるもの忘れ
体験したことの“一部”を忘れる(例:朝ごはんを食べたことは覚えているが、メニューが思い出せない) また、忘れたことの自覚があります。 - 認知症によるもの忘れ
体験したこと“すべて”を忘れてしまう(例:朝ごはんを食べたこと自体を覚えていない) しかも、初期段階を除いて、自分が忘れた自覚が薄い場合が多く、症状は徐々に進行します。
認知症の発症年齢――40代から注意が必要
認知症は高齢者だけの病気ではありません。平均発症年齢が54歳の「若年性認知症」も存在し、働き盛りの世代でも発症するリスクがあります。
近年は40代から発症リスクが高まる傾向があり、誰にとっても“自分ごと”として備えておく必要があるのです。
認知症の主な種類――原因によって異なる症状
認知症は一つの病気ではなく、さまざまな原因疾患が存在します。日本で多い「4大認知症」を中心にご紹介します。
1. アルツハイマー型認知症
特徴
- 認知症全体の半数以上を占める
- 脳内に「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、神経細胞が破壊されて進行
主な症状
- 新しいことを覚えられない(記憶障害)
- 時間や場所が分からなくなる(見当識障害)
- 徐々に料理やお金の管理など複雑な作業ができなくなる
2. 血管性認知症
特徴
- 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因
- 高血圧や糖尿病など生活習慣病がリスクを高める
主な症状
- 記憶障害に加え、感情の起伏や運動障害(歩行困難、麻痺など)がみられる
- 部分的にできること・できないことが混在する「まだら認知症」
3. レビー小体型認知症
特徴
- 「レビー小体」という異常たんぱく質が脳に蓄積
- 幻視(実際にはいない人や動物が見える)が現れる
主な症状
- 認知機能の変動(しっかりしている時とぼんやりしている時が交互に現れる)
- パーキンソン症状(歩行障害、手の震えなど)
- 睡眠時の異常行動
4. 前頭側頭型認知症
特徴
- 前頭葉や側頭葉の萎縮が原因
- 初老期(65歳未満)に発症しやすい
主な症状
- 感情や行動のコントロールが難しくなる
- 社会的ルールが守れなくなる、反社会的な行動が増える
症状の進行と生活への影響――何が困るようになるのか
認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」に分かれます
中核症状
- ほぼすべての認知症でみられる基本的な障害
- 記憶障害(新しいことが覚えられない、昔の記憶も失われていく)
- 見当識障害(時間や場所、人物が分からなくなる)
- 実行機能障害(計画を立てて物事を進めることができなくなる)
- 失語・失認・失行(言葉がうまく出ない、物の認識や使い方が分からない)
周辺症状(BPSD:行動・心理症状)
- 性格や環境によって現れ方が異なる
- 徘徊、暴言・暴力、妄想、うつ、不安、幻覚、睡眠障害など
生活で困る具体的なシーン
- 料理や買い物の手順を忘れる
- 家族や友人の顔が分からなくなる
- 約束や予定を何度も忘れてしまう
- 金銭管理ができなくなり、詐欺やトラブルに巻き込まれやすくなる
- 外出して迷子になる、徘徊する
進行段階ごとの変化
- 初期:「同じ話を繰り返す」「約束を忘れる」「趣味や関心が薄れる」
- 中期:「日常生活に介助が必要」「場所や時間の感覚が曖昧」「被害妄想や徘徊が増える」
- 末期:「会話や自発性がほとんどなくなる」「食事や排泄も全面介助」「寝たきり状態に」
認知症かな?と思ったら――早期発見・診断の重要性
典型的な初期サイン
- もの忘れがひどい(電話の相手の名前をすぐ忘れる)
- 同じことを何度も言う・聞く
- 日時や場所の間違いが増える
- 家族や周囲から「様子がおかしい」と指摘される
これらの兆候が複数当てはまる場合は、早めにかかりつけ医や専門医(もの忘れ外来、認知症外来)にご相談ください。
近年では、甲状腺機能低下症やビタミン不足など、治療で改善する“治る認知症”もあるため、適切な診断が不可欠です。
どう向き合う?認知症とその進行
認知症の進行はゆっくり。生活の工夫で「その人らしさ」を守る
認知症は“何もできなくなる病気”ではありません。初期や中期の段階では、ご本人の意思や希望を尊重しながら、できることを活かして自立した生活を送ることも十分可能です。
家族や支援者に求められる接し方
- 本人のプライドや気持ちを尊重し、否定や叱責を避ける
- できることを奪わないよう、役割や家事を一緒に行う
- 介護拒否があっても無理強いせず、時間をおいて再度声かけする
暴力や妄想への対応
- 興奮時は無理に制止せず、本人が落ち着くまで距離を置く
- 被害妄想には反論せず、共感的に話を聴くことが大切です
徘徊などのリスク対策
- 衣類や持ち物に名前・連絡先を記載し、万が一のときに備える
- GPS端末の活用や、地域の見守りネットワークと連携する
認知症の治療とケア――「治る認知症」と「進行抑制のための治療」
治療で回復が期待できるケース
- 正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などが原因の場合、適切な治療で認知機能が回復することもあります
薬物療法
- 完全な根治薬はありませんが、アルツハイマー型やレビー小体型認知症では進行を遅らせる薬や症状を緩和する薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)が使われます
- 2023年にはアミロイドβを除去し進行を抑える薬(レカネマブ)が日本でも承認されるなど新薬も登場
- 症状やタイプによって効果や副作用が異なるため、専門医による適切な診断・処方が重要です
非薬物療法
- 作業療法や運動療法、回想法、音楽療法、アニマルセラピーなど、本人の「やりたい」「好きだった」ことを活かした療法が効果的
- 生活リズムや人との交流を保つことも症状の進行抑制に役立ちます
介護と社会的サポート――「孤立させない」ためにできること
利用できる介護サービス
- グループホーム:認知症の人専用の共同生活施設
- 認知症対応型通所介護(デイサービス):日中だけ通所し、専門スタッフによるケアやリハビリを受ける
- 小規模多機能型居宅介護:「通い」「訪問」「泊まり」を組み合わせ、なじみのスタッフが対応
- 訪問介護・訪問看護:自宅での生活をサポート
相談窓口・地域の支援
- 地域包括支援センター:認知症の相談や福祉サービスの案内
- 認知症カフェ:医療・福祉専門職とお茶をしながら気軽に話せる交流の場
- 認知症の人と家族の会:同じ悩みを持つ家族同士の情報交換や支援
若年性認知症へのサポート
就労や子育て、経済的負担など、若い世代ならではの課題に対しても専門的なサポート体制が整いつつあります。
認知症の予防――今からできる生活習慣の工夫
認知症の最大のリスクは加齢ですが、生活習慣の改善で発症リスクを下げたり、進行を緩やかにしたりできることが分かっています。
予防のための3つのポイント
- バランスの良い食事
- ビタミン・ミネラル・青魚・大豆製品・緑黄色野菜を意識的に摂る
- 糖尿病や高血圧の予防にもつながる
- 継続的な運動
- 週2〜3回、30分以上のウォーキングや体操
- 脳の血流改善と体力維持に効果的
- 人とのコミュニケーション・社会参加
- 友人や家族との会話、趣味や地域活動への参加
- 新しいことにチャレンジすることで脳が刺激される
「共生社会」への新たな一歩――認知症とともに生きる未来
2024年、日本では「認知症基本法」が施行されました。
この法律は、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく、希望を持って暮らせる社会の実現を目指すものです。
「認知症になったら何もできなくなる」ではなく、「認知症になっても、できること・やりたいことがある」
本人の尊厳を守り、周囲が理解し支え合う。それこそが、これからの認知症ケアのスタンダードです。
まとめ
認知症は、誰もがなりうるものです。
しかし、適切な知識を持ち、早期発見・早期対応、生活習慣の工夫、そして社会全体での支援体制を活用すれば、進行を遅らせたり、本人らしい生活を長く守ることが可能です。
- 「あれ、最近ちょっと様子が変?」と感じたら、早めに医療機関へ相談しましょう
- 生活習慣の見直しは、今日から始められます
- 家族や地域の支援を積極的に利用し、孤立を防ぎましょう
「知ること」「気付くこと」「備えること」――この3つを意識するだけで、明日からの暮らしが大きく変わります。


