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創業から続く“熱”と「不易流行」の哲学——老舗クロレラメーカー、クロレラ工業・板波社長が見据える、変化を恐れない次の30年
ビジョナリー編集部 2026/06/24
1970年代のブームを経て、世界初のクロレラ専門メーカーとして確固たる地位を築いてきたクロレラ工業。創業60周年という節目を迎え、次なる30年へと歩みを進める中で、トップである板波英一郎社長は何を考え、どのように会社を導こうとしているのか。創業者が64歳で事業を興した情熱から、歴史ある企業が直面する「変化」への葛藤、そして人々の健康にとどまらず、気候変動に悩む農業や水産業への貢献まで。脈々と受け継がれる「不易流行」の哲学と、未来へのビジョンを語る。

企業の寿命は30年。クロレラの絶対的な価値をベースに、次なるステージへ
世界初のクロレラ専門メーカーとして長年業界を牽引してこられましたが、社長が就任されて以降、特に注力されてきた挑戦や意識の変化について教えてください。
私が社長に就任するまでは、当社は完全な「クロレラ専門メーカー」でした。「クロレラが一番であり、それ以外は少し劣る」という意識が強い会社だったのです。私たちが一生懸命にクロレラ市場を牽引してきたという自負があったからです。
しかし、現在では健康食品のマーケットには何千という種類があり、素晴らしい製品もたくさん存在します。そこで、私たちの製品に足りない部分を補うためにも、もう少し視点を広げ、他の健康食品にも目を向けていこうという意識 を持つようにしました。これまで50年以上培ってきた経験から、クロレラは他の成分や漢方薬などと組み合わせることでシナジーを発揮し、絶対に健康づくりのベースになる という確信があったからです。
企業というのは、大体30年で1つのサイクルが終わると考えています。そのまま廃れていく会社が少なくない中、私たちは今、第3のサイクルに向けて歩みを進めています。最初の30年は、全く知られていなかったクロレラを世の中に認知していただく期間でした。続く次の30年は、流通の仕組みが完全に変わり、IT化が進むなど、大きな社会の変革に対応してきた期間です。
そして創業から60年を迎えた今、AIなどのさらに進化した技術に支配されるのではなく、それをうまく取り入れながら、次の30年に向けてどう新しい市場展開を行っていくかが、現在の大きな課題だと捉えています。
64歳での起業。先代から受け継がれる「熱」と「気合と根性」が信頼の土台となる
日々さまざまな経営判断をされる中で、「人類に健康と幸福(しあわせ)を」という理念や研究開発へのこだわりなど、創業から引き継がれてきたものは何でしょうか。
先日、新入社員にも話したのですが、私が贈る言葉は結局のところ「気合と根性」です。これは営業だけでなく、研究開発においても同じです。素晴らしいデータが出るまでには、毎日同じ作業を繰り返し、24時間監視を何週間も続けるような地道な過程があります。そこで途中で諦めない気合と根性がなければ、結果は出ません。新しいシステムを導入する他部署であっても同様です。
仕事に対する「熱」がものすごく大切 なのです。私たちの創業者も、凄まじい熱を持った人物でした。例えば、娘(私の叔母)がアメリカでがんになった際、創業者は「俺はがんと戦うんだ」と言うほどの強い決意を持っていました。彼がクロレラの事業を始めたのは、なんと64歳、当時(1964年)の日本人男性の平均寿命が67歳の時です。
その年齢から新しいことに挑戦し、一丸となってエビデンスを出し、営業を広げていく。その熱意が周囲に伝わり、人と人との強固な繋がりを生んだ のだと思います。熱がないところには人は集まりません。この人との繋がりこそが、私たちが60年間持ちこたえてきた最大の肝だと言えます。
健康食品業界で信頼を守り続けるためには、やはりエビデンスベースであることが絶対条件 です。時代によって常識は変わりますが、企業としてしっかりと実験データを積み重ね、社会に対して分かりやすく提示していく姿勢が不可欠です。60年研究を続けていても、クロレラにはまだ新たな発見の可能性があります。その奥深さを追求し、エビデンスを出し続けていくことが私たちの使命です。
長い歴史を持つからこそ難しい「変化」。まずは社長自らが動いてみせる
老舗企業として新しい挑戦をされる中で、葛藤したり、判断が難しかったことはありますか。
長い歴史がある会社というのは、基本的に変化したがらないものです。役員も社員も、今まで通りにやっていれば十分にやりがいのある仕事ができているからです。これを変化させるのが一番難しいですね。
言葉でいくら「変わろう」と言っても、なかなか行動には移りません。山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉があるように、まずは私自身が自ら動いて、変わっていく姿を見せなければ人は動かない と痛感しています。
最近では、メーカー視点から消費者視点へと発信の方向性を変え、映像の見せ方を工夫したり、百貨店でポップアップイベントを開催したりと、新しいアプローチを始めています。1975年頃のクロレラブームを知る世代が高齢化する中、そのお子さん世代である40代から50代の方々への認知度を上げることが現在の課題です。そのため、健康食品としてだけでなく、原料としてレストランメニューでの採用やレトルトカレーの販売など、様々な場所でクロレラに触れてもらう「コンタクトポイント」を作る ことに注力しています。
私が大切にしているのは 「不易流行」 という言葉です。私たちがこれまで築いてきた人との繋がりや、エビデンスに基づく確かな価値など「変えてはいけない部分」は永遠に守り抜く。一方で、流通や消費者とのコミュニケーション方法、例えばネットの活用などは「時代に合わせて変えていくべき部分」として、柔軟に変化させていきます。
健康食品の枠を超えて。気候変動や食糧危機を救うクロレラの無限の可能性
これから10年、20年先に向けて、実現したい未来像について教えてください。
私たちの理念である「人類に健康と幸福(しあわせ)を」を実現するために、日本だけでなく世界へ、さらにクロレラを広めていきたいと考えています。そして、人々の健康だけでなく、農業や水産など、生きとし生けるものすべてに貢献できる存在 になりたいです。
実際、農業の分野ではクロレラの活用が非常に注目されています。現在、気候変動による猛暑で農作物が上手く育たないという深刻な問題が起きていますが、クロレラとエタノールを合わせた商品を散布することで、発育が大きく改善され、大半の収穫ができた等の好事例も出ています。トマトや白菜などの葉物野菜、お米、さらにはゴルフ場の芝生など、暑さ対策として大きな力を発揮しています。
クロレラは20億年前から地球上に存在していると言われています。過酷な環境変化やストレスを乗り越え、絶滅することなく生き抜いてきたということは、あらゆるトラブルに対処するための生命力や可能性を秘めている ということです。
気候が良い時や人間が元気な時にはクロレラの良さは分かりにくいかもしれませんが、過酷な環境になったり、体調を崩したりした時にこそ、手助けをしてくれる力を持っています。健康食品の延長線上だけでなく、世界のタンパク質不足を救う水産飼料としての活用など、これからさらに新しい発見や可能性が広がっていくと確信しています。
失敗を恐れず、不安を持ちながら変化し続けること
最後に、新しいことに踏み出せずにいる経営者や若い世代へメッセージをお願いします。
今はAIなどのテクノロジーが進化し、非常に変化が早い時代です。立ち止まっていれば、あっという間に置いてきぼりになってしまいます。そうならないためには、もう変化するしかない のです。
もちろん、変化するのは怖いことです。しかし、間違ったらどんどん修正していけばいい のです。「やってみて、違ったら修正する」、これを繰り返していくしかありません。経営者はそのリスクを負わざるを得ない時代になっていますし、若い方々も同じように飛び込むしかないと思います。
不安がない状態などあり得ません。 「常に不安を持ちながら、変化し続けていく」 ことが一番のポイントです。不安を嫌がって変化を拒めば、時代に取り残されてしまいます。不安を受け入れ、恐れずに新しいことへと挑戦し続けてほしいと思います。


