毎日のお買い物で支払う消費税、給料明細に並ぶ住民税や所得税…。気がつけば、私たちは日常生活のあらゆる場面で税金に触れています。
今回は、私たちが払う税金の種類と、そのお金がどのように社会に役立てられているのかを、身近な事例や世界のユニークな税金も交えつつ、解説していきます。
そもそも「税金」とは何のためにあるのか?
「税金」とは、国や地方自治体が、国民や企業から集めるお金のことです。このお金は、社会全体を支えるための“共通の財布”といえます。
例えば、道路や橋、上下水道、学校や病院、警察や消防――。こうした公共サービスやインフラは、すべて税金で成り立っています。
もし税金がなければ、救急車を呼ぶのも有料、子どもの教育やごみ収集まで“お金を払わなければ使えない”という社会になってしまいかねません。
つまり、税金は「みんなが安心して暮らすために、みんなで負担し合うお金」です。
そして日本国憲法でも「納税の義務」が定められており、国民として必ず果たさなければならない責任となっています。
税金はどう分かれている?――「国税」と「地方税」
税金は、その集め方や使い道によってさまざまな種類に分かれていますが、まず大きく「国税」と「地方税」の2つがあります。
国税
- 国が集める税金です。主なものに「所得税」「法人税」「消費税」「相続税」などがあります。
- 道路や年金、医療、教育、防衛など、国全体に関係する仕事に使われています。
地方税
- 都道府県や市区町村などの地方自治体が集める税金です。主に「住民税」「固定資産税」「都市計画税」「自動車税」などがあります。
- 上下水道やごみ収集、地域の福祉、消防・警察、教育など、地域に密着したサービスに使われています。
例:東京都と新宿区の税金の使われ方
東京都の場合、令和4年度の予算を見ると、「福祉と保健」「教育と文化」「都市の整備」など、住民の生活やまちづくりに直結した分野が上位を占めています。
新宿区では「福祉費」「子ども家庭費」「健康費」などが大きな割合を占め、子育てや高齢者福祉・医療など、住民一人ひとりの生活に寄り添う支出が多いのが特徴です。
税金の分類――どんな種類があるのか?
「税金」と一口に言っても、日本には約50種類もの税金があります。これらは目的や課税対象、納める先などでさまざまに分類できます。
主な分け方
- 国税/地方税
→ 国に納めるか、地方自治体に納めるかの違い。
- 所得課税/消費課税/資産課税
→ 何に対して税金がかかるかの違い(所得、消費、資産など)。
- 直接税/間接税
→ 税金を実際に負担する人と、納税する人が同じかどうか。
例:所得税は「直接税」(自分で払う)。
例:消費税は「間接税」(購入者が負担、事業者が納税)。
- 目的税/普通税
→ 使い道の目的が決まっているか、使い道が限定されていないか。
私たちが日頃負担している主な税金
それでは、具体的にどんな税金があるのか、代表的なものを見ていきましょう。
1. 消費税
- スーパーやコンビニで物を買う、サービスを受けるときに必ず払う税金です。
- 2019年10月からは10%に引き上げられ、私たちの家計に大きく影響しています。
- 消費税は事業者が納税しますが、実質的には消費者(=私たち)が支払っています。
2. 所得税
- サラリーマンなら給料、個人事業主なら事業の利益――こうした「所得」にかかる税金です。
- 収入が多いほど税率が上がる「累進課税制度」を採用しています。
- 会社員は「年末調整」、自営業は「確定申告」で納税します。
3. 住民税
- 自分の住んでいる市区町村や都道府県に払う税金です。
- 前年の所得に応じて額が決まり、地域の福祉や教育など身近なサービスに使われます。
4. 固定資産税
- 土地や家などの不動産を所有している人にかかる税金です。
- 毎年1月1日時点の所有者に課せられます。
5. 相続税・贈与税
- 親などから財産を引き継いだり、人からお金や物をもらったときにかかる税金です。
6. 酒税・たばこ税・ガソリン税
- お酒やたばこ、ガソリンなど、特定の商品にかかる税金です。
- 買い物の際、商品価格に含まれているため、意識せずに支払っていることが多いです。
税金はどんなことに使われているのか?
「納めた税金が何に使われているのか?」――これは誰しも気になるところです。
国税の主な使い道
- 社会保障関係費(医療・年金・福祉など):全体の約33.7%。少子高齢化で年々増加傾向です。
- 国債の返済・利子の支払い(国債費):22.6%。過去に発行した国債の返済にも多く充てられています。
- 地方交付金等:地方自治体への財源補填が14.8%。
- 公共事業(道路・住宅の整備等):5.6%。
- 教育や科学技術の振興:5.0%。
- 防衛費:5.0%。
- その他(海外援助・経済協力など):8.1%。
地方税の主な使い道
- 福祉・保健・子育て・健康・教育・文化:自治体によって配分は異なりますが、住民の生活に直結した分野が中心です。
- 警察・消防・ごみ処理・上下水道:暮らしの安全や快適さを守る基盤となっています。
身近な例
公立学校の運営や備品、図書館、公園、保健所、子どもや高齢者への福祉サービス、災害時の救助活動――こうしたものは全て税金で支えられています。
世界のユニークな税金――「税」が映す社会の価値観
税金は国によって多種多様。日本にはない、世界の面白い税金も存在します。
- ポテトチップス税(ハンガリー)
塩分・糖分の多い食品に課税し、肥満防止を狙っています。
- 渋滞税(イギリス・ロンドン市)
指定エリアに車で入ると課税。渋滞緩和や環境保護のためです。
- 犬税(ドイツ、オランダなど)
犬を飼うと税金がかかり、安易な飼育や放棄を防ぎます。
- 脂肪税(デンマーク)
バターや乳製品など脂肪分の多い食品に課税し、健康意識を高めています。
- かつての日本の「犬税」やロシアの「ひげ税」
税金の歴史は、その時代の社会背景や価値観を色濃く反映しています。
デンマークの消費税は25%――「高い税金」に納得できるわけ
日本の消費税率10%でも「高い」と感じる方が多い中、デンマークではなんと25%!
それでも国民から大きな不満が出ないのは、税金が教育や医療の完全無償化、充実した福祉に使われているからです。
「高い税金=負担」ではなく、「高い税金=安心・快適な暮らし」という実感があるからこそ、納得して納税しているのです。
税金の課題とこれから――「社会の持続性」を考える
日本の税金制度も、いま大きな課題に直面しています。
- 国の借金増大
日本の借金(国債等)は年々増加し、その返済にも税金が使われています。
- 少子高齢化
年金や医療、介護など社会保障費が膨らむ一方で、働き手・納税者が減少し、世代間の負担バランスが課題となっています。今後は「どのように負担を分かち合い、どんな社会を目指すのか」が問われています。
まとめ――「税金の使い道」を知ることが、賢い市民への第一歩
税金は、その一つひとつが私たちの暮らしの土台を支えています。
「自分の払った税金がどこでどう使われているのか?」
一度、自治体や国のホームページで予算や決算の使い道を覗いてみてはいかがでしょうか。
納税は義務であると同時に、「より良い社会を選択するための力」でもあります。
税金の仕組みや使い道を知り、自分の暮らしと社会の“つながり”を感じてみてください。