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2025

    地球を未来に残すための挑戦(前編)

    地球を未来に残すための挑戦(前編)

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    日本に、地球に“あたりまえ”に存在するインフラや環境が危ない ―― 今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道の老朽化という社会問題の存在を強く突き付けた。地球環境問題が悪化を辿る社会の現状と向き合い、『環境技術で世界に貢献し未来を創る』というパーパスを制定し、立ち位置の再定義を図った企業がある。上下水道の汚泥処理技術でトップクラスの実績を誇り、水インフラや環境保全をもとにした水環境事業のさらなる拡大を進める月島ホールディングス株式会社の川﨑淳社長に、環境保全事業の展開と我われが認識するべき環境問題の現状について伺った。

    前会長のもと経営を学ぶ。これからは「原理原則を守りつつも新しいことに挑戦し続けることが大切」

    川﨑社長は入社以来様々な経験をされてきましたが、経験された立場での心境の変化などがありましたらお聞かせください。

    当社グループの人員構成は技術・技能系が全体の7割ぐらい、残りが事務系というイメージです。事務系で入った社員は総務や人事、財務といった管理部門を専門職的に従事する人と、当該部門を異動しながら総合職的に従事する人に分かれ、私は後者でした。私は山田前会長の部下として20年近くキャリアを過ごし、自分の上司が偉くなったのでついでに私も立場が上がっていきました。今も社内研修の場で言っていますが、サラリーマンというのは能力や実績にそれほど差はなくて、誰と仕事をするかによってキャリアの道筋が決まる、だから人との出会いを大切にすることが大事だと思っています。山田さんとの出会いは、私の職業人としての人生の大きな転換点になりました。

    20年も山田前会長の部下として過ごされたのは、信頼も厚かったからではないでしょうか。

    確かに上司部下の関係で、そういう人は社内では稀だと思います。常に仕事は厳しかったですが、成長の機会を多くいただきました。そんな時間をずっと過ごしてきたので、おのずと自分のマネジメントの基本は山田さんから受け継いだものです。ただ、世の中の大きな変化と、それに伴う事業環境の変化に適合していくためには過去の経験則だけでは通用しません。原理原則を守りつつも新しいことに挑戦し続けることが大切だと思います。足もとでは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などの経営課題に取り組んでいます。

    子どもたちにより良い地球環境を残すことこそ月島HDの存在意義

    上下水道設備の事業分野でトップクラスと知られている貴社グループは、2023年の4月にホールディングスとして新たなスタートを切られました。その際、『環境技術で世界に貢献し未来を創る』というパーパスを制定されたと伺いましたが、それをもとにどのように事業を展開されていくのでしょうか。

    パーパスの制定は、我が社の社会における存在意義、立ち位置を示さないといけないという意味で考えました。よくサステナビリティ経営と言われていますが、究極的に何を『サステナブル』にするべきかというと、それは地球環境だと思います。去年、東京の真夏日は100日近くあったそうです。一年の1/3が30℃以上なんて耳を疑います。そう遠くない時期に日本の夏は常時40℃を超えて、日が照っている時間帯は警報が鳴って外に出られない国になるかもしれません。そんな世の中を子どもたちに残してはまずいだろうと思います。我われの時代で起こした地球環境問題は、何一つ積み残しせず我われの時代で解決すべきです。当社は1950年くらいから環境保全関連の事業をやってきたわけですが、こうした自分たちの問題意識を今回のパーパスで示しました。当社グループの事業ドメインは、水インフラ関連を担う水環境事業と民間のお客様に環境ソリューションを提供する産業事業となっています。産業事業の中には、医薬や食品、化粧品業界向けの機器を製造販売する事業会社もあり、「地球も、人も、豊かに」という点で事業に一貫性を持たせています。来るべき100年人生の時代において伸びていく分野だと期待しています。

    八潮市の道路陥没事故が突き付けた、日本の下水道の危機的な現状

    1月に埼玉県八潮市で道路の陥没事故がありました。上下水道設備に携わる企業として、この事故についてどう捉えていらっしゃいますか。

    大変痛ましい事故であり、実際に被害にあった人がまず救い出せてないということに心を痛めています。その思いと同時に、こういうことが全国あらゆる場所で発生するリスクを下水道事業に携わる者として強く憂慮しています。大きな社会課題として皆が考える契機になってほしいです。下水道の分野は大きく3つ、一つは管路、それと下水管をつなぐポンプ場、そして私どもが担う下水処理場があるのですが、総じて老朽化が進んでいます。多くは日本の高度経済成長期に整備したものですが、管路に使用されているコンクリートの寿命は50~60年です。下水に含まれる物質の影響を考えれば寿命はさらに短いはずです。そのような中で今回の事故が発生しました。上下水道設備の整備にかかる主な財源は水道料金・下水道使用料ですが、多くの自治体は長らく値上げが行われておらず、そのため前向きな予防保全ができない状態にあります。八潮市での事故を契機に水道料金の値上げに踏み切る自治体も出始めましたが、いざインフラ整備の工事に着手できるのはもっと先です。私は上下水道に限らず、大型化する自然災害にも備えるため、新しい国土強靭化計画というものを官民一体となって考え、実行に移す時期にあると思います。

    貴社が手掛けているのは本当に必要とされる事業なのですね。

    そういう自負で仕事をしています。この地球は今を生きている人たちだけのものではありません。使いっぱなしはだめ。汚したらきれいにする。家を借りた時と同じです。我われの時代でそういうことをせずに、子供たちに偉そうなことを言ったって『こんな滅茶苦茶な地球環境にしたのはあなた方でしょう』と怒られると思います。自分たちの事業活動を通じて、少しでもより良い世の中を作っていきたいです。(続く)

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