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2025

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    消費者リサーチの革新企業、ノウンズの経営哲学を育んだ「意志(Will)の力」

    消費者リサーチの革新企業、ノウンズの経営哲学を育んだ「意志(Will)の力」

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    大学在学中に起業、新卒でリクルートへ。その後、気鋭のAIスタートアップで急成長と組織崩壊を経験し、再び起業の道へ――。多彩な経歴を持つノウンズ株式会社の代表取締役・田中啓志朗氏。そのキャリアの根底には、幼少期から一貫して持ち続けてきた「意志(Will)の力」という強い信念があった。波瀾万丈の道のりの中で彼が何を学び、どのような価値観で現在の会社を率いているのか。その原点に迫る。

    ビジネスの面白さは『こち亀』から、金銭感覚は親から学んだ

    まず、田中社長のご家庭や幼少期のご経験からぜひお聞かせください。

    私は大阪で生まれ、奈良で育ちました。ごく一般的な家庭でしたが、母方の祖父が事業家だった影響は今までのキャリアとの関係性が少しあるかもしれません。幼少期の話なので恥ずかしいのですが、幼い頃に私に影響を与えたものの一つが、漫画『 こちら葛飾区亀有公園前派出所 』です。小学校4年生のころから集めていて、ビジネスのことはもちろん、昔の時事や、様々な趣味関連の話など、たくさんのことを教えてもらいました。

    『こち亀』のことは皆さんご存知かもしれませんが、主人公の両津勘吉が様々な事業を立ち上げては、成功したり、失敗したりして、最終的に大原部長に怒られる。あの一連の流れが本当に面白くて、世の中には色々なビジネスがあり、こうやってお金を儲けるのかと、その仕組みを両さんから学びました。成功も失敗も華々しく描かれるあの物語は、間違いなく今の私の役に立っています。

    もう一つ、親から教わった金銭感覚も大きいですね。私の両親は子供のWillに寄り添ってくれてお金を惜しまずに使ってくれる人でしたが、一方で自分たちのことで散財しているところを見たことがないくらい堅実なお金の使い方をする人でした。両親の姿を見て、自分の身の丈に合ったお金の使い方をすることの大事さを感じたことが、私の金銭感覚の根底にあると思います。この金銭感覚が、会社の経営においても、Willへの投資はしますが、無駄な経費はできる限り使わず、やるべきことに資金を集中させるという考えに繋がっていると思います。

    「やりたい」と思った瞬間、道は拓ける。意志の力が道を拓いた学生時代

    学生時代に培った価値観はどんなものだったのでしょうか。

    私の人生を振り返ると、「意志(Will)の力」が道を拓いてきたと感じることが何度もあります。

    中学受験の時も、大学受験の時もそうでした。普段はあまり勉強しないタイプなのですが、小学6年生の秋に「偏差値的に絶対無理だけどこの学校に行きたい」と思った瞬間、高校3年生のときに「偏差値的に絶対無理だけど東京大学を目指したい」と思った瞬間から、凄まじい集中力を発揮して目標に近い結果を得ることができました。 自分が「やりたい」と心から思った時の力は絶大で、その意志は必ず叶う と信じています。

    この信念は、大学時代の起業経験にも繋がります。大学2年生の時、それまでの1年間、遊びが中心で非常に怠惰な生活を送っていたのですが、あるときに「このままでは何もしないまま4年間が過ぎてしまう」という危機感から、全く違うコミュニティに飛び込もうと思い自分の人生で一切接点がない人たちである美大生と交流しはじめました。そこで出会った仲間と共に、美大生の才能を社会に活かすための会社を立ち上げたのです。大企業と美大生を繋いで商品を共同開発するなど、様々な事業を手掛けました。しかし、学生起業で能力不足を痛感し、一度就職して力をつけようと、新卒でリクルートの門を叩きました。

    ビジネスモデルより「人の力」。リクルートで学んだこと

    強い意志から成し遂げる力、素晴らしいですね。新卒で入社されたリクルートはどのような環境だったのでしょうか。

    リクルートでは、上流のシステム設計や開発、データベースエンジニアからキャリアをスタートし、2年目以降はさらにマーケティングや新規事業の立ち上げを同時並行に数多く経験しました。3年目には、社内でも珍しい物流機能を持つ部署のフルフィルメント統括チームを任されるなど、難易度の高い仕事に挑戦する機会に恵まれました。

    リクルートで最も強く感じたのは、あの会社の強さの源泉は、ビジネスモデルではなく、圧倒的な「 人の力 」だということです。そこには「Will-Can-Must」というフレームワークが文化として根付いており、常に「あなたは何がやりたいのか」を問われます。事業に対する一人ひとりの強い意志が、会社全体を前進させているのです。特定のスタープレイヤーに依存するのではなく、すごい熱量を持った人材が次々と現れる。会社にいる皆がWillを持ち、熱量高く活躍できる環境を作る。この組織への考え方は、現在の会社経営における私の原点になっています。

    スタートアップでの成功と挫折。内部崩壊から学んだ「相手を思いやる」ということの重要性

    その後、スタートアップに参画されていますが、そこではどのような経験をされたのでしょうか。

    リクルートで5年ほど経験を積んだ後、私はAIスタートアップに初期メンバーとして参画しました。Webサイト訪問者の行動から感情を予測し、購入を後押しする「ZenClerk」という画期的なプロダクトを開発しており、会社は急成長を遂げました。

    しかし、全てが順風満帆だったわけではありません。個々のメンバーが非常に優秀だった一方で、個人事業主感があり、組織としての結束力はとても脆い状態でした。その後あるきっかけがあり、会社は内部崩壊を起こしてしまったのです。せっかくうまくいっていた事業が、人の問題で崩れていくのを目の当たりにし、本当に悔しい思いをしました。

    この時、痛感したのが「 相手を思いやる 」ことの重要性です。個の力が強いメンバーが集まるスタートアップは、成長期は勢いがありますが、ひとたび歯車が狂うと瓦解も早い。また、組織が成長するとありがちなセクショナリズムは組織崩壊の引き金になります。「結局は同じVMVを達成する仲間だ」という意識が根底にあれば、崩壊にまでは至らなかったはずです。この苦い経験から学んだ教訓は、絶対に繰り返すまいと心に誓いました。

    自分の手で価値を創りたい。創業の原点にある想い

    人を大切にすることの重要性を学んだ瞬間だったのですね。苦しい経験をされてその後、学生時代に起業された企業に戻られています。そこで得られたものはどのようなものだったのでしょうか。

    AIスタートアップでの経験後、大学時代に立ち上げた美大発ベンチャーに戻りました。私が離れていた時期も順調に成長を続けていて、綺羅星のようなクリエイターが、皆が注目するクリエイティブをどんどん生み出しており、その会社の一員であることにとても高揚感を覚えていました。会社の成長は喜ばしかったものの、自分の原点はデータやマーケティング、事業立ち上げにある。 当事者として、社会に価値あるものを作ったと胸を張れるサービスを手掛けたい 。その思いが日に日に強くなっていきました。

    その頃、リクルート時代に感じていた「消費者リサーチの非効率さ」という課題を思い出し、「これこそが自分が解決すべきことだ」と確信しました。ちょうど2人目の子どもが生まれたタイミングでもあり、働き方を変えたいという思いも重なって、2019年に現在の会社を創業しました。

    経営の軸は「人」と「運」。サーバント・リーダーシップで未来を創る

    様々なご経験をされた田中社長が、経営者として大切にされていることを教えてください。

    経営者として私が大切にしていることはいくつかありますが、2つご紹介させてください。一つは、先ほどの経験からも分かる通り「 人を大事にすること 」です。自分一人でできることには限界があります。社員や取引先など、周りの人々を大切にすることが、結果的に自分自身を、そして会社を成長させることに直結すると信じています。

    もう一つは、「 自分は運がいい 」と信じ切ることです。もちろん苦労はありますが、どんな困難も、周りの力や運に助けられて必ず突破できる。自分の実力ではなく、支えてくれる人たちと運のおかげで今がある、という感覚が常にあります。

    世の中の起業家や社長はカリスマタイプやリーダータイプの牽引型の方が多いイメージがありますが、私はそういう人とは程遠いタイプです。むしろ、周りの優秀な人たちが輝けば輝くほど、会社は前に進むと考えています。最近になって「サーバント・リーダーシップ」という言葉を知りましたが、まさに私のスタイルはそれだと感じています。これからも現場主義を貫き、未来のビジョンと「今」のバランスを取りながら、皆が働きやすい環境を作っていくことが私の役割です。

    創業時から変わらない。「消費者意識データ」で世界一を目指す

    ありがとうございます。最後に、これからの展望をお聞かせください。

    私たちが創業時から一貫して追求しているのは、「 消費者意識に関するファーストパーティデータを、世界で最も多く保有する 」というビジョンです。

    生成AIが進化する現代において、その学習源となる独自データの価値は計り知れません。私たちは、競合他社が「イノベーションのジレンマ」によって本格参入しづらいこの領域で、圧倒的なポジションを築きつつあります。

    自分でも驚くのですが、創業時に作成した事業計画書に書かれていることと、今やっていることは何も変わっていません。それだけ、この事業の価値を確信していたということです。やるべきことは明確です。これからもブレることなく、世界一のデータカンパニーを目指して、仲間と共に進んでいきたいと思っています。

    #トップインタビュー#ノウンズ#Knowns#経営者#ベンチャー#SaaS#調査#リサーチ#データ分析#AI#サブスク

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