「挫折こそ、最強の才能だ」――上田綺世と鹿島学園...
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「答えは、ベンチにはない。」自立した“個”を創る鹿島学園・鈴木雅人監督「5つの名言」
ビジョナリー編集部 2026/01/12
第104回全国高校サッカー選手権大会、初優勝。鹿島学園の躍進を支えたのは、指揮官・鈴木雅人監督が25年間、選手たちに語りかけ、問いかけ、心に植え付け続けてきた「言葉」の数々だ。
その言葉は、単なるサッカーの指示ではない。不確実な時代を生き抜くための「指針」であり、組織を強くするための「原理原則」である。 日本一のチームを創り上げた名将の言葉から、人を育て、組織を勝たせるためのエッセンスを紐解く。
「型を教えるのではない。型を壊す勇気を教えている。」
【Innovation】常識を疑う力
指導者の役割とは何か。多くの人は「正解(型)を教えること」だと考えるだろう。 だが、鈴木監督はそれを否定する。教えられた通りに動く優等生は、想定外の事態に脆いからだ。
「状況を見て自分で判断し、必要であれば常識や型を超える決断ができる選手」 それこそが、鹿島学園が目指す選手像だ。
無難なパスを選んで褒められるより、リスクを背負って挑戦し、失敗することを選ぶ。 その「型破りな失敗」の積み重ねだけが、土壇場での創造性と、何事にも動じない勝負強さを育てる。 型を教えるのは簡単だ。だが、型を壊す勇気を教えることこそが、真の教育である。
「答えは常に、ピッチの上で選手自身が持っている。」
【Empowerment】現場への全権委任
鈴木監督は、タッチライン際で大声を出して指示を送るタイプの指揮官ではなく、選手たちの動きをじっと見守る姿が印象的だ。それは放任ではなく、「現場への究極の信頼」の証だ。
相手のプレッシャーの強度、芝生の湿り気、味方との距離感、そしてスタジアムの空気。 それらをリアルタイムに肌で感じているのは、ベンチの監督ではなく、ピッチに立つ選手たちだ。 だからこそ、最適解を知っているのは彼らでしかあり得ない。
「今、何が起きている?」「どうすれば、もっと良くなる?」
監督は答えを与えず、問いを投げる。 指示待ち人間は、状況が変わった瞬間に思考停止する。だが、問いかけられた人間は思考を始める。 自ら気づき、修正する力。その蓄積が、ベンチの指示を超えた「想定外の勝利」を引き寄せる。
「勝利は結果に過ぎない。本質は、そこに至るまでの『自立』にある。」
【Independence】プロセスへの責任
勝負の世界において、結果から逃げることはできない。だが、勝利そのものを目的にした瞬間、成長は止まる。 鈴木監督が見ている指標は一つ。「自立しているか」だ。
自立とは、勝手気ままに振る舞うことではない。 「自分の判断がチームに与える影響を想像し、その結果に対する責任をすべて引き受ける覚悟」のことだ。
うまくいかない時、ベンチを見るのか、仲間と話し合うのか。 失点した時、誰かのせいにするのか、次の一手を考えるのか。 勝利は、自立した集団が正しいプロセスを歩んだ先に落ちている「結果」に過ぎない。 負けた試合であっても、そこに自立した修正があれば、それは敗北ではない。成長だ。
「全員攻撃、全員守備」
【Synergy】セクショナリズムの打破
これは使い古された戦術用語ではない。組織論だ。 「攻撃はFWの仕事、守備はDFの仕事」。そんな役割の固定化(サイロ化)を、鈴木監督は嫌う。
前線が守備をサボれば後衛が死ぬ。後ろが攻撃を怖がれば前線が孤立する。 サッカーは11人で一つの生き物だ。 ボールを失った瞬間、誰のためにどこへ走るか。奪った瞬間、誰がリスクを冒して飛び出すか。
「指示待ちの選手を育てたくない」 自分の役割を理解した上で、境界線を越えて助け合う。 誰かのミスを他人事にしない。その献身と相互補完の関係性が、チームとしての一体感を生む。 これは企業組織においても同様だ。「それは私の仕事ではありません」という言葉が聞こえる組織は、決して勝てない。
「『第六感』を磨く。」
【Intuition】データを超えた人間力
データ全盛の現代において、鈴木監督があえて大切にするのが「第六感」だ。 それはオカルトではなく、経験の蓄積から弾き出される、論理を超えた「直感」だ。
選手の表情の翳(かげ)り、声のトーン、醸し出す空気。 「今、声をかけるべきか、待つべきか」「背中を押すべきか、突き放すべきか」。 理屈では説明できない“間”や“タイミング”を感じ取る力。
教えすぎない。急がせない。でも、見逃さない。 最先端のAIを導入し、科学的トレーニングを取り入れながらも、最後の判断は「人を感じ取る力」に委ねる。 このアナログで人間臭い感覚こそが、選手と監督の間に「理屈を超えた信頼」を築き上げる。


