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9/27(日)

2026年

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    背中で語る現場の姿勢と「人は必要とされるから生きられる」という真理

    背中で語る現場の姿勢と「人は必要とされるから生きられる」という真理

     組織の規模が大きくなり、職人約500名とパート・アルバイトスタッフを含めて従業員数が1,000名を超える規模となった今でも、私が常に大切にしている現場の原点があります。それは、口先だけの指示や理論で人を動かそうとするのではなく、まずは経営者自身が同じ目線に立ち、行動で示してみせるということです。

     忘れられない出来事があります。ある年のクリスマスの日のことでした。世間はデートやパーティーで華やぎ、寿司屋にとっては客足が少し遠のきがちな時間帯です。秋葉原の店舗へ足を運んでみると、雪が今にも降り出しそうな凍てつく真冬の寒さの中、店の入口前に若いスタッフがチラシ配りをしていました。通りを行く人波はまばらで、チラシを受け取ってくれる人はなかなかいません。

     私は何も言わず、上着を脱ぎ、その場に駆け寄りました。

     「ちょっとチラシを貰うよ」

     極寒の路上に立ち、私は通りを行くお客様に向かって「いらっしゃいませ! おいしいお寿司はいかがですか!」と笑顔で大きく手を振り、声を張り上げて呼び込みを始めました。社長である私が凍える寒さの中で身を粉にして手を振る姿を見たその若いスタッフは、ハッとした表情を浮かべると、自分の寒さも忘れてジャンパーを脱ぎ、私と並んで懸命にお客様へ手を振り、声をかけ始めたのです。

     「言葉で100回命じるよりも、背中で一度やってみせる」

     自分が先頭に立って泥をかぶり、同じ目線で汗を流す姿を見せることによってこそ、人の心は動きます。そして、一度現場でそうした姿勢を体感したスタッフは、不器用であっても自ら考えて動く本物の戦力へと成長していくのです。

     また、1,000名ものスタッフが自主的に生き生きと働いてくれる組織を作るために、私が面接や入社時に必ず投げかける質問があります。前話でも触れましたが、それこそが「君は何のために働くのか」という根幹の問いです。

     「生きるため」「学費を払うため」「生活のため」という答えが返ってきたら、私はそこから「なぜ? なぜ?」と対話を深めていきます。「生活のために給料をもらって、どうしたいのか?」「何のために自分は生きたいのか?」と突き詰めていくと、多くの人が答えに詰まります。

     そこで私は、人間という生き物の最も本質的な真理を伝えます。

     「人間はね、人から必要とされるからこそ、力が出せるし生き生きと頑張っていけるんだよ。人に必要とされ、喜んでもらうことこそが、人が楽しく生きるための絶対の原点なんだ」

     誰からも必要とされず、感謝もされない生き方の中で、本当の幸せや働く喜びなど生まれません。お客様においしい料理を出し、「美味しかったよ!」と笑顔で喜んでもらう。元気な挨拶と温かい接客で、「ここに来ると元気になるよ」と必要とされる。そうやって誰かを幸せにし、感謝される体験を重ねることで、自分自身の生きる喜びもまた育まれていくのです。

     私たちは一人で生きているわけではありません。幼い子供は母親のおっぱいによって生かされますが、母親もまた「この子のために頑張ろう」と子供の存在によって生かされています。お店も同じです。お客様はおいしいお寿司によって満足を得て喜びが生まれ、私たちはお客さまの「おいしかった」という言葉と感謝によって生かされている。人間社会とは、すべて互いが互いによって「生かされ合っている」関係で成り立っているのです。

     ゲーテの詩や小説を読んだり、ソクラテスの難解な哲学を学ぶことも素晴らしいですが、こうした「お互いに必要とされ、生かされ合う」という道徳の原点こそ、いまの日本や若い世代に最も必要な教育だと感じています。

     従業員をはじめ、商工会議所での1,000人規模の講演や、大学での講義、そして海外での活動においても、私はこのシンプルな生き方の真理を伝え続けています。人が人を思いやり、互いに必要とされながら喜びを循環させていく——。国境や立場を超えてこの「食と心の循環」を広げていくことこそが、私に課された生涯の使命なのです。

    #木村清#すしざんまい#経営哲学#リーダーシップ#現場主義#人材育成#働く意味#仕事のやりがい#組織づくり#モチベーション

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