Diamond Visionary logo

10/29(木)

2026年

SHARE

    「街づくりのパートナーとして選ばれる存在に」——NTTアーバンソリューションズ・池田康社長が語る、人を活かす経営と「街づくり」の未来

    「街づくりのパートナーとして選ばれる存在に」——NTTアーバンソリューションズ・池田康社長が語る、人を活かす経営と「街づくり」の未来

     通信事業を軸とするNTTグループの中で、「不動産・建築事業」を担うNTTアーバンソリューションズ。そのトップを務めるのが池田康社長だ。民営化直後に日本電信電話(現NTT)に入社し、人事関連業務を長年経験してきた同氏が、不動産・建築のプロフェッショナル集団を率いる上で大切にしているのは「いかに社員の力を引き出すか」というマネジメントの基本だった。これまで取り組んできたそれぞれの地域に寄り添った「街づくり」、NTTグループ独自の技術を生かした今後の取り組み、リーダーシップのあり方について話を伺った。

    通信から「街づくり」へ。NTTの技術と不動産を掛け合わせる挑戦

    まずは2019年のNTTアーバンソリューションズ設立の背景と、現在の事業について教えてください。

     通信事業を中心に拡大してきたNTTグループが、当時、成長の柱の一つとして打ち出したのが不動産・建築事業でした。日本全国には、電話局などの通信設備が入ったビルを含め、NTTグループが保有する不動産(CRE:企業不動産)が数多く存在します。NTTアーバンソリューションズは、NTTグループがもつICT、不動産、エネルギー、環境技術などのリソースを活かし、全国各地の個性豊かで活力ある街づくりを支える企業 として、2019年にNTTグループの中間持株会社として設立されました。

     その傘下には、街づくりなどのコンサルティングを行うNTTアーバンソリューションズ総合研究所、不動産開発を推進するNTT都市開発、建物の設計管理などを手掛けるNTTファシリティーズ、建物の管理・運営を担うNTTアーバンバリューサポートの4社があり、このフォーメーションによって「上流から下流」まで、一気通貫で街づくりに関わる体制を構築しています。

    「社員の力を引き出す」マネジメント

    池田社長は長く人事関連業務をご担当されてきたそうですが、不動産会社のトップとしてどのような組織づくりを意識されていますか。

     民営化直後のNTTに入社して以来、長く人事関連業務を担当してきた私にとって、2019年のNTTアーバンソリューションズの発足に合わせて着任したのが、初めての不動産業界でした。通信と不動産との大きな違いに、当初は戸惑いもありましたが、組織づくりで大切なことは変わらないと感じました。

     私は常日頃、自分一人でできることには限界があるという自覚を持っています。だからこそ大切にしているのは、スキルや経験を持った社員のモチベーションをいかに引き出して気持ちよく働いてもらうかということです。これは人事の視点でもずっと考えてきたことでもあります。

     社員とのコミュニケーションを大切にし、自分から積極的に声を掛けることはもちろん、社員向けのブログも書いています。緊張したり悔しがったりするありのままの自分を見せながら、社員に力を発揮してもらえる環境を作ることが、私の役割だと考えています。

    地域の課題に向き合い、その場所に寄り添った街づくりに取り組む

    これまで手掛けられた中で、代表的なプロジェクトを教えてください。

     都市部で言えば、大阪のNTT西日本本社跡地に開業したホテル「パティーナ大阪」および⼤阪市初のPark-PFI 事業として進めた「難波宮跡公園・なノにわ」は代表的な事例です。2025年の大阪・関西万博の開幕に合わせ、国際競争⼒強化に資するホテルを誘致し、大阪の東西軸における賑わいの創出に寄与しました。「パティーナ大阪」は、今年の7月に「World's Best Awards 2026」で日本のホテルとして初めて世界ベストホテル第1位に選ばれるなど、非常に高い評価をいただいています。 記事内画像 パティーナ大阪(©Daiki Morita)

     また、2026年に全面開業した複合商業施設「原宿クエスト」の建て替えも印象深いプロジェクトです。1988年に開業した旧「原宿クエスト」は、かつて日本電信電話公社の総裁公邸があった土地に建設されました。時代の変化に寄り添いながら、原宿という街の個性とともに進化を続けるため、建て替えを実施し、表参道と神宮前一丁目エリアをつなぐパサージュ(施設内通路)を組み込むなど、新たな回遊と滞留を生み出しました。 記事内画像 原宿クエスト(©Forward Stroke Inc.)

     地方で言えば、宮崎市で2025年に開業した複合商業施設「HAROW(ハロウ)」は、宮崎駅前と中心繁華街の中間に位置するNTT西日本宮崎支店敷地を活用し、低下していた中心市街地の回遊性と日常的な賑わいを高めた事例です。コンテナを活用した小規模な商業施設とリノベーションオフィスを整備したことにより、投資を抑えながら街に新しい人の流れと賑わいを生み出すことができ、地元の方々からも大変喜ばれました。 記事内画像 HAROW広島通(©Kenta Hasegawa)

     ほかにも、2026年に開業した「アーバンネット札幌リンクタワー」や、2024年に開業した「アーバンネット仙台中央ビル」の中には、スタートアップ支援施設や共創・賑わい拠点を設けています。地方の若者が東京へ流出してしまうという課題に対し、地元でネットワークを作り、交流・共創できる場を提供することは、私たちにできる重要なサポートだと考えています。

     地域の街づくりにおいて、私たちには大きなアドバンテージがあります。それは「NTT」というブランドへの信頼です。私たちは、企業利益の追求だけでなく、全国のインフラを支えてきた「NTTらしさ」を発揮して課題を解決し、いかに地域の方々のお役に立てるかも重視しています。「自分たちの利益だけ考えているわけではない」「地域からいなくなることはない」と、自治体の方々や地域の皆さまも安心して話を聞いてくださることは大きな強みです。

    日比谷から最先端を発信。IOWN構想を取り入れた「光の街」づくり

    今後の注力プロジェクトや、会社としてめざす姿についてお聞かせください。

     現在、最も注力しているのは日比谷の再開発プロジェクトです。かつての日本電信電話公社やNTTの本社跡地に「NTT日比谷タワー」を建設中で、2031年の竣工を予定しています。

     ここはNTTグループの歴史が刻まれた場所であり、私たちにとって非常に思い入れの深い場所だからこそ、「NTTを象徴するビル」を実現したいという思いがあります。NTTグループが推進する次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の技術を全面的に取り入れ、「光の街」づくりをコンセプトに最先端のビルを開発します。 IOWNやAIなどの先進技術を活用し、グローバルな共創を支える新たなビジネス環境や、リアルとバーチャルが融合した次世代のライフスタイル・エンターテインメントを創出します。あわせて、建物仕様の設計工夫に加え、光電融合デバイスの活用による圧倒的な“超・低消費電力化”やAIによるエネルギー最適化により、省エネと快適性を両立し、持続可能な社会の実現をめざします。こうした取り組みを通じて、NTTグループの技術力と未来の街づくりを体感できる都市空間を創出していきます。また完成した際には、日比谷公園と街区をつなぐ橋が架かり、銀座方面への通り抜けが可能になります。人が集まり回遊するさらに魅力的な街へと大きく生まれ変わるはずです。

     昨今は建築費の高騰という大きな課題もあり、金利上昇の局面において、先行投資となる不動産開発には難しさも伴います。そのため、古いビルを壊して新しいビルを建てる再開発などの「攻め」と、既存のオフィスビルに新しい価値を追加するリノベーションのような「守り」のバランスを取りながら、キャッシュフローを意識した舵取りを行っているところです。

     最終的にめざすのは、街づくりのパートナーとして選ばれる、信頼される存在になること です。「NTTの建物を地域のために活用したい」「NTTの技術を使って町おこしができないか」といった地域のご要望にお応えできる企業グループでありたいと思っています。

    上司はどんなに辛くても「機嫌よく」。次世代リーダーに伝えたい言葉

    最後に、読者であるビジネスパーソンや次世代のリーダーへ向けてメッセージをお願いします。

     私が大切にしている言葉に、「他人と過去は変えられない、自分と未来は変えられる」というものがあります。人を変えようとしても難しいですが、自分自身は変わることができます。

     もう一つ大切にしているのが、 「悲観は気分、楽観は意志」 という言葉です。落ち込んだりダメだと思ったりするのは単なる感情ですが、物事をポジティブに受け止めるのは自らの意志でできるということです。

     チームを率いるリーダーにとって一番大切なのは、メンバーが前向きに仕事に取り組める風通しの良い風土を作ることです。そのためには、「何を言っても大丈夫だ」という心理的安全性が欠かせません。私は、上司はどんなに辛くても「機嫌よく」振る舞うべき だと考えています。不機嫌そうな上司には悪い情報が入らなくなり、職場も暗くなってしまいます。部下に余計な気を遣わせず、前向きな気持ちで働いてもらうための努力は、リーダーの重要な役割です。

     NTTグループには、「つなぐ」という素晴らしいDNAがあります。若い社員には、そのDNAを大切にしながらも、前例にとらわれずのびのびと挑戦してほしいと伝えています。思い切って前例を打ち破るチャレンジをしてほしい。結果の責任は私が取ります。 皆さんの意見を虚心坦懐に聞き、最後はリーダーである私が覚悟を持って決断する。これからも、そんな組織づくりを続けていきたいと思います。

    #NTT#NTTアーバンソリューションズ#NTT都市開発#街づくり#都市開発#不動産#再開発#地方創生#地域活性化#IOWN#スマートシティ#経営#経営者#リーダーシップ#マネジメント#人材育成#組織づくり#心理的安全性#働き方#日比谷

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    「地域と生きる金融」へ。城南信用金庫・林理事長が...

    記事サムネイル

    売上ではなく『体験した人数』を追え。アルビオン流...

    記事サムネイル

    「ふえるわかめちゃん」だけじゃない——日本の“食...

    記事サムネイル

    「人口減少」を「希望」に変える——創業100年へ...

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI