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「どうやってお客様を喜ばせ、驚かせようか」——伊勢半 澤田晴子社長が語る、消費者の心をつかんで離さない商品開発の極意
ビジョナリー編集部 2026/09/24
江戸時代から続く「紅屋」をルーツに持ち、2025年には創業200周年を迎えた老舗化粧品メーカー、伊勢半。「ヒロインメイク」や「ヘビーローテーション」など、世代を超えて愛されるヒット商品を生み出し続ける背景には、時代の変化を恐れず挑戦し続ける「革新」の歴史があった。
先代から脈々と受け継がれてきた「職人気質」と品質への徹底したこだわり。そして、お客様を驚かせ、喜ばせたいという「ワクワク感」を原動力とする組織風土。伝統を重んじながらも、次なる100年に向けて世界へと羽ばたく澤田晴子社長に、伊勢半の強みと未来へのビジョンを伺った。
江戸の紅職人から「ヒロインメイク」へ。200年受け継がれる職人気質
御社は200年という長い歴史をお持ちですが、変わってはならない本質や、御社の強みについてどのようにお考えですか。
私自身、入社時から当社の歴史の重みを感じていました。その中で社員とともに心に刻んでいるのは、 「伝統とは革新の連続である」 ということです。伝統は単に守るものではなく、革新を重ねた結果として形作られていくものだと考えています。
また、先代からずっと言われていたのは、 「品質へのこだわり」 です。戦後まもなくは、粗悪品でも売れる時代でしたが、いずれ品不足が解消されれば、質の悪いものは淘汰され良質なものが生き残ると、原料の品質には妥協を許しませんでした。
当社は江戸時代に「紅屋」としてスタートしましたが、現在のメインブランドである「ヒロインメイク」にもその精神は受け継がれています。「落ちにくさではどこよりも負けないマスカラを作ろう」「どこまでまつ毛を長く美しく見せられるか」と研究員が情熱を懸ける姿は、昼夜を忘れて美しい色出しを競い合った江戸の紅職人そのものです。
現在でも、企業として紅屋を営み、美しい玉虫色に輝く良質の紅を作り上げる技術は当社の矜持です。この妥協なき職人気質 こそが、変えてはならない当社の根幹だと思っています。
良いものを作り、伝える術を持つ。アイデアマンだった先代の教え
困難な決断を迫られた際、大切にされている軸や、先代からの教えなどはありますか。
私の義父であり、昭和の時代に会社を紅屋から総合化粧品メーカーへと転身させた6代目当主・澤田亀之助の教えを大切にしています。どんな困難にぶつかったとしても、 「必ず質の良いものを作ろうという意思が一番大切である」 と教わりました。
また、 「良いものを作っても、自分たちで満足しているだけではお客様に伝わらない。伝える術を持たなければならない」 という教訓も伝えていました。そのためには、最良のものづくりにこだわり、一切の妥協を許さない。また、商品の価値を伝えることに使命感をもつ、という教えを守り続けています。
先代は仕事に厳しく情に厚い人でした。また、面白いことや、新しいことにチャレンジすることが大好きなアイデアマンでもありました。例えば、アメリカの販売手法を視察し、日本の化粧品業界で初めてお客様が自由に商品を手に取って選ぶことができる「パーフェクト・セルフ・パッケージ(PSP)」という、セルフ販売方式を導入したのも先代です。リスクを顧みず、まずはやってみるという行動力で業界を切り開いてきた歴史があります。
一人の消費者として「ワクワク感」を大切に。商品開発のこだわり
世の中に新商品を出していく際、社長ご自身がこだわっているポイントは何ですか。
常に一消費者としての視点 を持ち、 「ワクワク感があるか」 「自分だったらその価格でお金を出して購入したいか」という基準を大切にしています。社員からユニークなアイデアが出てくる商品発案会などでも、一人の消費者として皆が共感できるものかを注視しています。
商品を手に取った時や、ポーチに入れて持ち歩く時、どんな気分になるのかを想像し、使用して、安心感や高揚感が得られるか、にこだわります。例えば、パッケージでは人前でも出しやすく、持っていて気持ちが高揚するような工夫を求めています。
また、セルフ化粧品だからこそ、パッケージや売り場の什器が商品の魅力をしっかりと物語っているか どうかが重要です。パッと目に入った瞬間にお客様に違いを感じ取っていただけるかという、ブランディングの視点を常に意識しています。
「どうやって人を驚かせようか」。楽しむ心意気が新しい価値を生む
社員の皆さんには、どのような存在であってほしいとお考えですか。
時代の変化に対して常に前向きであり、柔軟な対応ができる人であってほしいと伝えています。また、自分らしさを肯定しつつも、改善を続け、他者を尊重してチームで働けることも重要です。
200周年を機に制定した「The 1st Cosmetics. 伊勢半 いちばんほしいを、いちばんに」というパーパスには、お客様が一番欲しいと思っているものを、一番に提供できる企業でありたいという思いを込めました。そのための心意気として私が社員に伝えていることが、 「どうやって人を喜ばせ、驚かせようか」 と、考えながら仕事をしようということです。
「伊勢半がまた面白い商品を出してきた」、「こんな面白い仕掛けをしている」と、ワクワクしながらお客様に向き合うことで、仕事自体がとても楽しくなるはずです。実際、当社の「ヘビーローテーション」は眉毛を染めるのではなく、メイクでカラーリングするという新しいトレンドの火付け役となり、大きなイノベーションを生み出しました。営業社員たちが自ら企画・出演する店頭販促動画も作ったりしています。こうしたお客様を楽しませようとする仕掛け人の精神 が、新しい価値、トレンドを生み出していると感じています。
世界に通じる企業へ。若手社員にこそ海外の熱気を肌で感じてほしい
200周年という節目を迎えられましたが、次の10年、50年を見据えたビジョンをお聞かせください。
現在の具体的な課題として、2つの軸があります。1つ目は、特定のカテゴリーに特化した「単品ブランド(ヒロインメイク・ヘビーローテーションなど)」の強みを活かしつつ、ベースメイクからカラーメイクまでフルラインナップで展開する 「什器ブランド(KiSS・キスミー フェルムなど)のブランド力を骨太に育てていくこと」 です。
2つ目は、グローバル展開の強化 です。現在14の国と地域に輸出していますが、特にアメリカではあらゆる方に「ヒロインメイク」を手に取っていただき、着実に売上が伸びています。見た目のインパクトだけでなく、実際に使っていただいた際の「ジャパンクオリティ」の品質が高く評価されていると実感しています。
こうした世界に通じる企業になるためには、グローバル人材の育成が不可欠です。先日もアメリカで開催された美容・化粧品の展示会「Cosmoprof North America」に、若手社員も連れて行きました。日本のサービスのレベルの高さや品質に誇りを持ちつつ、海外の熱気や文化を直接肌で感じて刺激を受けてほしいからです。若い人たちには実際に世界を見て体験し、世界に通じるリーダーへと成長してほしい と願っています。
化粧品の力でお客様の生活を豊かに。社会に貢献するカバーメイク事業
最後に、事業を通じた社会への貢献について、どのようにお考えですか。
私たちの化粧品を通して、すべてのお客様に美しさという自信と希望をお届けすること です。
例えば、「眉毛ホームルーム」や「KISSMEメイク部」といった取り組みでは、中高生や男性、親子に向けてメイクの楽しさをお伝えする活動を継続しています。自分自身の顔と向き合い、コミュニケーションのツールとしてメイクを楽しんでいただく機会を提供することは、企業としても大きなやりがいでもあります。
また、伊勢半グループでは「マーシュフィールド」というカバーメイク専門の会社も運営しています。あざ・白斑・傷跡など、肌色に深い悩みを持つ方々が、明るく社会へ一歩を踏み出すためのお手伝い をしています。一人ひとりの肌色の悩みに合わせて使い方を提案しながらカバーメイクを提供することで、化粧品の持つ力で社会に貢献していきたいと考えています。


